「秋猴(しゅうこう)の身とは手をださぬ心なり。
敵に入身に少しも手を出す心なく
、敵打つ前、身をはやく入るる心也。」
入身(いりみ)”という体さばきをするときの注意点を、
秋猴(しゅうこう)という腕の短い猿にたとえて、あらわした言葉です。
敵の、死角に入り一瞬にして勝ちを収めるための最適の位置。
その位置に入るため、敵の”結界”、攻防のバリアを超えねばなりません。
普通日常生活において私たちは、手(腕)を先に動かしています。
それで体が遅れたり、バランスが崩れていたとしても、不自由を感じません。
しかし宮本武蔵が身を置いた、生死をかけた戦いの場ではそんな無駄な動きは、許されません。
遅れや崩れは敗北(死)を意味するからです。
手を先に出していたら体が遅れます。敵に遅れた体を制されてしまいます。
そこで秋猴(しゅうこう)のイメージコンセプトを使い、入身するのです。
「手を出さんと思へば、必ず身の遠のくものなるによって、
惣身をはやくうつり入るる心なり。
手にてうけ合はするほどの間には、
身も入りやすきもの也。能々吟味すべし。」
宮本武蔵 「 五輪書 水の巻」より